オープンから7年目の、
リブランディング。

自社で運営している飲食事業の店舗「焼菓子とごはん CAFE MUGI」。「菓子時間ムギ」へと店名も新たに、カフェから菓子店へのリブランディングを行った。2017年のオープン以降、マフィンとチーズケーキを中心とした焼菓子と、定食などのごはんを楽しめるカフェとして、店舗や仙台駅周辺での催事出店を中心に営業してきたが、高まる需要に対して菓子製造の生産能力を高める必要があり、店舗の大規模リニューアルと合わせて、お店の在り方やコンセプトを一から見直すリブランディングを行うこととなった。店舗スタッフとともに何度もミーティングを重ね、“お菓子の時間を大切に”というスローガンを策定。そこからネーミング、商標登録、ステートメント、ロゴマークへと展開していき、紙媒体、ウェブサイト、撮影、店舗サイン、ショップツールに至るまでのすべてを担当した。

目的は、
2つの課題解決。

工事開始のおよそ3年ほど前から構想のあったリニューアル。大きく分けて、2つの課題を解決することが目的だった。

1つ目の課題は、製造能力。2017年の開店から数年が経過し、徐々にお客様に認知していただけるようになってきた頃、特に外部での催事出店の際に、需要に応じてお菓子の製造個数を増やしていく必要があった。
しかし、当時の厨房は、開店当時には想像できなかったほどに大量の菓子製造をこなすにはあまりにも小さく、設備も限られていたため生産性が悪く、同じ作業を1日に何十回と繰り返して地道に製造個数を増やしていた。そのため、商品が求められるほどにスタッフの負担が大きくなっていた。
それに加えて、店舗の営業をしながら大量のお菓子を製造することは不可能だったため、店舗を休業して出店のための製造に専念しなければならないという矛盾が生じてしまっていたため、スタッフのみならず足を運んでくれるお客様のためにも、製造能力の課題解決は急務だった。

2つ目の課題は、ネーミングによるブランド浸透の阻害。それまでの店名は「焼菓子とごはん CAFE MUGI 」。“焼菓子とごはん”が楽しめることや、“カフェ”という業態を分かりやすく伝える目的で付けられた店名であったが、それが返ってブランド浸透を阻害してしまうケースが度々あった。
その中のケースの一つは、タイプミス。例えば、“焼菓子とごはん”を付けるかつけないか。“CAFE MUGI”はローマ字かカタカナか、大文字か小文字か。“焼菓子”か“焼き菓子”か。小さな違いではあるが、SNSでお客様がアップする際などに店舗に関連するハッシュタグが複数存在してしまうことで、分散して発信されてしまっていた。
もう一つのケースは外部での催事出店の際、販売商品と店名のギャップが生じていたこと。出店の際に販売するのは焼菓子のみで、お菓子屋のスタイルで出店していたが、店名は「焼菓子とごはん CAFE MUGI 」。“ごはん”や“CAFE”のような文言があることで印象がバラバラになっていた。単純な店名としてだけではなく、外部の出店や商品単体で見られた際にも、それ自体がブランドとして認知されていくことを目指して、ネーミングを改める必要性があった。

このような課題を解決するためのリニューアルプロジェクト。表面的なデザインの格好を良くするといった目的ではなく、すべては課題解決のため。店舗スタッフに、ブランディングデザイン、商品開発、店舗意匠設計など様々なメンバーが加わり、数年越しのプロジェクトが動き出すことになった。

これまで大切にしてきた
“お菓子の時間”をブランドの中心に。

まずは、お店の在り方やコンセプトの見直しからスタート。お店の強みや大切にしたいこと、お客さまに届けていきたいものとは。店舗スタッフとブライトでチームを組み対話を重ねていく中で、“お菓子の時間”というキーワードが浮かび上がってきた。

2017 年の開店当初から自然と習慣になっていた、お菓子の時間。それはスタッフみんなでコーヒーを滝れてお菓子を囲んでから、その日の営業を始めるというもの。少し手を止めて、お菓子を食べてふっと笑顔になったり、コーヒーを片手にたわいもない会話をしたり。時間にしてみればたった数分のことでも、忙しない日々にそうした瞬間があることで気持ちがほぐれ、今日もがんばろうと思える。だからこそ、お菓子があることで生まれる暮らしの中の間(ま)や、和やかなひとときをお客さまへ届けたい。そんな声から、“お菓子の時間”をブランドの中心に置いて開発していくことになった。

想いを伝えるために、
言葉のデザイン。

想いをお客さまなどの外部の方に伝えるためには、伝え方や内容を整理し、デザインしていくことが必要。そのためにまずは、お菓子があることで生まれる暮らしの中の間(ま)を“菓子時間”と表し、お客さまの日常がより良い1 日になるように、いろんなシーンに合わせた幸せな菓子時間を提供することをコンセプトに設定。店名はストレートに、「菓子時間ムギ」と改めることになった。

その上で、ブランドの最も核となるメッセージであるスローガン「お菓子の時間を大切に」と、それを補足するステートメントを設定。いろいろな人の暮らしの中にある“間(ま)”を思い浮かべながら、毎日を少し特別にするお菓子を作っていることを、店舗スタッフの優しい人柄に合わせたトーンで伝えるよう設計した。

シンプルなロゴマークに隠された、
3つのギミック。

ブランドの誕生時など、まだ世の中に知られていない場合においては、なるべく広く早く認知され浸透していくように、ロゴマークの表現性を強めることが必要なケースもあると考える。しかし今回の場合は、開業から7年が経過しある程度はブランドが浸透してきている上に、課題解決が本来の目的である。そこで、あえてロゴマークはできるだけシンプルにし、イラストのビジュアルで世界観を作り出すことを心がけた。誰でも必ず読めることを前提に、ビジュアルを邪魔しないよう、ロゴタイプとただの打ち文字とのギリギリの表現を目指した。

シンプルなロゴマークの中でも、3つのギミックが隠されている。
1つ目は、「当たり前の見直し」の表現。これは社内の行動指針の一つであり、自分自身のフィルターを通して見直しながら商品開発をし、お客さまへ提供するということを意味している。ロゴマークにおいても、日常的によく目にする書体でありながらも広告の現場では使用されることが少ない「MSゴシック」を見直し、ロゴマークに昇華させることで行動指針を表現した。

2つ目は、“間(ま)”の表現。文字と文字の間を図案化し、間を表現するオリジナルの柄を作成している。

3つ目は、正三角形の表現。カタカナの”ム”の中に正三角形を表現し、❶お客さま ❷支えてくれる外部の事業者さま ❸一緒に働いてくれる仲間 この3点が支え合うことで、お店が成り立つことを表現している。

デザインが変わっても、
ビジュアルの印象は引き継ぐ。

ブランドリニューアルの前からビジュアルをお願いしていた、イラストレータのナガノチサトさん。すでにお客様にも、ナガノさんのイラストがムギの印象として残っていることも踏まえて、引き続きナガノさんへイラストを依頼。デザインが変わっても、ビジュアルとしての印象は変えないようにした。

お菓子があることで生まれる暮らしの中の間(ま)である“菓子時間”。それは、15時のおやつを意味しているわけではなく、朝、昼、午後、夜など、いろいろな人のいろいろな暮らしの中にあるもの。という想いをビジュアルでも表現するために、暮らしの一部を切り取ったイラストをビジュアルにすることを目指した。
連想したお菓子の時間を「連想したお菓子の時間を「❶遅く起きた朝ごはん・❷15 時のお菓子時間・❸夕方のお菓子時間・❹夜のお菓子時間」と4つの設定に分類してイラストを描いていただいた。1つは、ブランドのメインビジュアルとして全体を包括する位置付けのイラストとして。その他の3つは、3サイズあるパッケージの箱など、使用シーンを分けてブランドイメージとして活用。その他、紙媒体やウェブサイト、メニューなどの店舗ツールに展開している。

菓子時間ムギとして
一貫したひとつの印象に。

ここに至るまでに、ロゴマーク、間(ま)を表現した柄、ビスキュイ色を表現したブランドカラー、ビジュアルイラスト、ブランドフォント、細かなブランドパーツなど、全体のデザインルールやパーツが揃っていることから、そのルールを全ての媒体に生かして展開している。店舗の空間、メニューなどのツール、お菓子のパッケージ、リーフレットやショップカードなどの紙媒体、ウェブサイトやSNSなどのオンラインツールなど、いつどこで何を見ても、菓子時間ムギとして一貫したひとつの印象を伝えている。

全ては「階段」から始まった
店舗設計。

店舗設計は、ブライトとともにクライアントワークも行なっているLIFE RECORD ARCHITECTSに依頼。
今回の店舗リニューアルは製造能力の課題解決のために、製造スペースの拡大をすることが一番の目的であった。しかし、菓子時間ムギのある1TO2BLDG.は建物の一番奥に階段があり、お客さまが2階の客席に向かうためには必ず奥まで進んでもらう必要があった。動線を変えない限りは製造スペースの拡大には限界があるため、まずは階段を建物手前に増設するための方法を検討していただくところからはじまった。様々なパターンを検証していただいた結果、無事に階段を増設することができることになった。ただし構造上コア抜きができるエリアが限定されるため、階段位置をはじめに決定しそこから空間全体の意匠設計がスタートした。

これまでの空間はコンクリートや鉄などが剥き出しになっておりクールな印象だったが、実際に働いているスタッフや提供しているメニューの雰囲気にギャップがあったことから、全体としては温かみのある空間を目指した。また、生地のような質感の壁や、こんがりと焼かれたクッキーのような質感の床、型抜きされたクッキーを再現したサイン、お菓子の焼型を使用した照明。実際に店舗に訪れたお客さまだけが楽しめる、菓子屋ならではの要素が散りばめられている。

ブランド開発完了後も、
育てつづける。

ブランドは、開発が完了したら終わりではなく、育てていかなければならないもの。SNSの投稿計画サポートや、店内のメニュー・POP等のツール作成、催事出店用のブースデザイン、季節性キャンペーンのビジュアル撮影など、菓子時間ムギというブランドがより浸透していくためにのブランド運用に引き続き携わっている。

制作物

菓子時間ムギ
パッケージ

店舗 パッケージ イラスト 印刷

菓子時間ムギ
紙媒体

店舗 グラフィック コピー イラスト 印刷

菓子時間ムギ
ブランドサイト

店舗 ウェブ コピー イラスト 撮影 スタイリング

菓子時間ムギ
サイン

店舗 サイン 施工

詳細

クライアント

社名/菓子時間ムギ(自社運営店舗)
地域/宮城県仙台市
期間/2023.1〜

ブライト

ブランディングディレクター・デザイナー : 荒川敬 / ディレクター・コピーライター:伊藤優果 / ウェブデベロッパー : 福井亜沙子

ブライト以外の方々

イラスト:ナガノチサト / 印刷製造 : 有限会社スマッシュ / 撮影 : SEND(窪田隼人) / スタイリスト : 八杜舎(廣田絵美) / 意匠設計:LIFE RECORD ARCHITECTS(川上謙・丹紀子) / 施工:株式会社N・T. ファミエスホーム

その他

米作りから酒造りまで。
言葉通り「イチから」造る日本酒ブランド。

一ノ蔵

プロダクト コンセプト ネーミング スローガン ステートメント ロゴ パッケージ

宮城県を代表する酒造会社である、株式会社一ノ蔵。数年かけて進められてきた新しいプロジェクト「イチからはじめるイチノクラ」シリーズのラベルデザインについて、2022年5月にブライトへご相談いただいた。同年12月に1本目を、2023年2月に2本目と3本目をリリースした。

ペンションの朝食で作っていた、
ジャムから始まる物語。

びんのおのや

プロダクト 資金計画 コンセプト ネーミング スローガン ステートメント コピー ロゴ パッケージ グラフィック 撮影 スタイリング

2016年からはちみつやジャム、バターの製造販売を行っている「びんのおのや」のリブランディング。はじめに依頼いただいたのは「バラとはちみつ」という製品単体のパッケージデザイン。しかし「びんのおのや」というブランドを強めるのであれば、パッケージの見え方を統一する必要があると考え、ブランド全体のリブランディングを提案。提案するだけではなく実現のために資金計画から並走し、補助金申請のサポートからプロジェクトがスタートした。ブライトでは、資金計画、コンセプト、スローガン、ステートメント、ロゴマーク、グラフィック、パッケージデザイン、印刷、コピーライティング、撮影、スタイリング他、リブランディングに関わるすべてを担当した。