耕作放棄地を開懇し、 里山暮らしの新しいモデルを作りたい。
祖父母の反対を押し切り、
自身の力で農家に。
『おかえりモネ』で知られた宮城県登米市にある、木漏れ日農園。2021年1月にリブランディングをご相談いただき、同年10月にリリース。ブライトでは、コンセプト・ロゴマークとブランドの基礎設計部分から、紙媒体・ウェブサイト・プロモーションムービー・フォトディレクション、包装ラベルなどのコミュニケーション部分のすべてを担当した。
園主の鎌田大地氏は、高校2年の頃に家族へ「農家になる」と宣言し、兼業農家だった祖父母の反対を押し切り、農業経営を学ぶため大学へ進学。勉学に励む一方で、様々な農家と交流を持ち、卒業後を見据て積極的に活動。2015年3月に大学を卒業後、同年4月に木漏れ日農園を開業した。はじめは農家になることを反対していた家族の協力も得て、20年以上耕作放棄されていた土地を農地として蘇らせることに成功。たった50アールから始まった畑は、現在約160アールにまで拡大している。
木漏れ日農園では、登米市伝統野菜16種を含め、年間約100種類の野菜とハーブを、農薬や化学肥料を使わずに栽培している。また、野菜作りのほか、間伐材を熱源として利用した菌床キノコ栽培や、平飼い有精自然卵養鶏、里山由来のニホンミツバチの養蜂なども行い、年中収入源を作れるように、農業・林業・畜産業の複合経営を行い、里山暮らしの新しいモデルを日々模索しながら作物を作り続けている。
里山という「場」から
生まれるデザイン。
「木漏れ日農園」は、2015年の開業以来使ってきたネーミング。「木漏れ日の鎌田くん」と浸透していたことから、愛着のあるネーミングや想いはそのままに、今まで伝えきれてこなかった部分を補うようにデザインの力を活用しようと考えた。園主である鎌田大地氏の、これまでの想いや未来の目標などを丁寧に汲み取りながらプランニングを行い、まずは、ロゴマークを作るにあたり3つの視点から設計していった。
1つ目は、「里山という場所が抱える課題」。高齢化が進み、田畑の担い手がいなくなると、人の手が入らず耕作放棄地が増加し、山間地域全体と平地との境目がなくなり野生動物が平地まで降りてきてしまう。これにより、平地の作物を食べ荒らすことに繋がってしまい、全国的に深刻な問題となっている。中山間地域は条件不利地と呼ばれることもあり、なかなか活用することが難しいのが現状だ。しかし、その難しい問題にあえて取り組み、木漏れ日農園が里山の恵みを活用した持続可能な産業を創出することで、条件不利地であっても「農業を生業として豊かに生きる」というモデルケースを作りたいと考えている園主。将来的には研修生を受け入れて、課題を抱える全国の山間地域で活躍してもらい、一緒に盛り上げていきたいという目標もあった。その想いも汲み取り「里山」という場所をデザインの中心に置くことを考案した。
開墾した場所が、
もたらす必然性。
2つ目は、「開墾した場所がもたらす必然性」。耕作放棄地になっていた場所を開墾し始めた農園。周辺の落葉樹の葉っぱが落ちては堆積して…を20年以上も繰り返したことにより、それが質の良い土壌となり、図らずとも栄養豊富な腐葉土になってくれたのである。さらには害虫が発生しても、益虫や鳥との共存により被害は抑えられ、農薬を使わない栽培を可能にした。1つ目の視点と同じく、「里山」という場所を表現の中心に置くことの必然性が生まれた。
園主の人柄を、
表現したい。
3つ目は、「園主の人柄」。デザインをする上で、ただ外部の私達が一方的に整ったデザインを提案することに違和感を感じ、「木漏れ日の鎌田くん」という人柄を大事にしたいと考えていた。里山の大地を耕し生活する、園主自らの手を加えながら一緒に作り上げたいと考えた(偶然にも名前が「大地」だった)。具体的に行ったことは、筆で園名を書いてもらい、様々な媒体物へ展開していくというもの。本人は苦手と言いつつも、人柄がよく表れたロゴマークが生まれた。
農園のシンボルとなる、
ヤマボウシの木。
農地を開墾していく中で、いくつかそのまま残した木々がある。中でも大きく存在感のあるシンボルになっているのが「ヤマボウシ」の木。その葉や幹、花や実をモチーフにイラストを作成し、木漏れ日農園の印象を作り出す要素になった。
ブランドルールを、
展開する。
出来上がったブランドルールをもとに、必要な媒体物を作成。農園のことをもっと知ってもらうためのリーフレットやウェブサイト、プロモーションムービーを制作した。綺麗な水や自然豊かな里山の環境を伝えるために、農園以外にも周辺環境の撮影まで丁寧に行った。また、パッケージとして、販売する作物に貼り付けるラベルシールも制作。季節ごとに収穫する作物が異なるため、ブライトではデザインのフォーマットまでを作成し、園主自ら商品名を編集できるようにしている。作物の中には、一般にはあまり知られていない野菜もあるため、それぞれのラベルにはレシピを閲覧できる二次元バーコードを付けている。
現在、デザイン開発部分は完了しているが、本格的に作物の収穫が始まる6月〜11月頃まで、弊社運営店舗で木漏れ日農園の野菜を実際に仕入れ、販売のサポートも行っている。これには、仙台市街地でも認知を広げるきっかけを作りたいという想いがある。また、オンラインショップにて、野菜や卵の注文も受付けている。登米の大地で育った作物を、多くの方に召し上がっていただけたら嬉しく思います。
詳細
クライアント
社名/合同会社木漏れ日農園
地域/宮城県登米市
期間/2021.01~
ブライト
ブランディングディレクター・デザイナー : 荒川敬 / デザイナー : 福井亜沙子
ブライト以外の方々
撮影 : 後藤壮太
リンク
その他
ペンションの朝食で作っていた、
ジャムから始まる物語。
びんのおのや
プロダクト 資金計画 コンセプト ネーミング スローガン ステートメント コピー ロゴ パッケージ グラフィック 撮影 スタイリング
2016年からはちみつやジャム、バターの製造販売を行っている「びんのおのや」のリブランディング。はじめに依頼いただいたのは「バラとはちみつ」という製品単体のパッケージデザイン。しかし「びんのおのや」というブランドを強めるのであれば、パッケージの見え方を統一する必要があると考え、ブランド全体のリブランディングを提案。提案するだけではなく実現のために資金計画から並走し、補助金申請のサポートからプロジェクトがスタートした。ブライトでは、資金計画、コンセプト、スローガン、ステートメント、ロゴマーク、グラフィック、パッケージデザイン、印刷、コピーライティング、撮影、スタイリング他、リブランディングに関わるすべてを担当した。